なぜ「消費者」という身分が消滅するのか
従来のマーケティングは「企業が完成した製品を提供し、消費者がそれを購入・使用する」という一方向性に基づいていました。この関係では、企業が創造者で消費者は受け手に徹していました。しかし Z 世代とその後続の α世代(アルファ世代)(2010年以降生まれ)は、YouTube や TikTok といった動画プラットフォームで、自らもコンテンツの作り手として成長してきました。つまり、彼らにとって「受け取るだけ」という立場は違和感があり、むしろ「自分たちも作る側になる」ことが自然な行動になったのです。その結果として、今回の調査で 65% の Z 世代が自分をクリエイターと認識するようになったわけです。
ビデオゲーム・ソーシャルメディア空間が「共創」の舞台になった理由
製品やコンテンツを「改造素材」や「共創のキャンバス」として見なすようになったのは、テクノロジーの進化と密接に関係しています。ビデオゲーム空間では、プレイヤーが自由にキャラクターをカスタマイズでき、独自のコミュニティを構築できます。Z 世代と Millennials の 40% が、対面よりもビデオゲーム内で人間関係を構築・維持しているという事実が示すように、このゲーム空間は単なる娯楽ではなく、創造と表現の場になっています。同様に YouTube や TikTok といったプラットフォームは、視聴するだけではなく、ユーザーが自分のコンテンツを制作・投稿できる設計になっており、オーディエンス(視聴者)から「プロシューマー」(Consumer=消費者とProducer=生産者を組み合わせた造語で、消費と生産の両方を行うユーザー)へと進化させています。この環境の中では、既存のコンテンツを素材にしてリミックスすることが当たり前になったのです。
企業戦略が「完璧さ」から「改造可能性」へシフトする必然性
Z 世代クリエイターが求めるのは「美しさより真正性」「フォロワー数より共同体」「バイラルより価値観の共有」です。言い換えると、彼らは完璧に完成された製品よりも、自分たちがカスタマイズできる余地がある製品を価値があると判断しています。企業のメッセージを一方的に受け取るのではなく、自分たちで改編・発信し直せるコンテンツを求めています。このニーズに応えるには、企業側が発想そのものを転換する必要があります。プロダクト設計の段階から「ユーザーが何を付け加えるか」を想定し、マーケティングキャンペーンも「完成した広告」ではなく「ユーザーが加工できる素材」として提供する戦略が不可欠になるのです。このシフトは単なる手法の変更ではなく、企業と消費者の関係性そのものの再構築を意味しています。