ロゴを真似ない「合法のそっくりさん」が文化に
米国Z世代(1997〜2012年生まれ)の70%が、ラグジュアリーブランドの代替品である「Dupe(ドゥープ)」を日常的に購入していると報告されています(複数業界調査の集計に基づく)。Dupeとはduplicateの略で、ロゴやブランド名はコピーしないが、デザインや色味を強く想起させる安価な商品のこと。コピー商品(カウンターフィット)と異なり違法性はなく、TikTok上では「Find Me a Dupe(私のためにDupeを探して)」というハッシュタグが数十億回再生されています。Business of Fashionのポッドキャスト(2026年配信)でも「Dupe文化が伝統的なラグジュアリーを脅かしている」と分析されました。
「賢く似せた」という消費体験そのものが価値
従来、ブランド消費は「正規品を持っていることのステータス」でした。しかしZ世代にとっては「これ、Dupeなんだよ」と打ち明けることが新しい誇りになっています。クリエイターがラグジュアリー製品とDupeを並べ「違いはここだけ」と数秒で証明する動画が日常的にバズり、視聴者は数分後にAmazonで注文します。価値の本質が「ブランドの所有」から「賢い発見と共有」へと移っているのです。
背景にある経済不安と価値観の転換
Z世代がDupeに流れる理由は、住居・食料インフレで可処分所得が圧迫されている経済的事情だけではありません。「ブランドは過剰に値付けされている」という不信感が広がっているのです。同じ素材・工場で作られたバッグが、ロゴの有無で10倍の値差になることへの違和感。Z世代の消費観は「他人にどう見られるか」より「自分の判断が正しかったか」を重んじる傾向が強く、Dupeはこの価値観に合致します。一方でブランド側は商標権だけでなく、デザイン・カラー・テクスチャの「想起」をどう守るかという難題に直面しています。
ラグジュアリーは「体験」「希少性」へ再定義中
これに対しエルメスやシャネルなどは、製品単体の販売から「体験・コミュニティ・アーカイブ」を売る方向へ舵を切りつつあります。プライベートサロン、限定オーダー、修繕・リペアなど、Dupeでは決して再現できない要素に投資する戦略です。日本のブランドにとっても示唆深いのは、見た目の模倣は数日でリプロダクトされる時代に「模倣しきれない価値」をどう設計するかという問題です。Dupeは脅威であると同時に、本質的な差別化を再定義する強烈な圧力でもあります。