SUSTAINABILITY 🇪🇺 EU 2026.05.07

EUが「売れ残り服の廃棄」を法律で禁止

#EU規制 #サーキュラーエコノミー #ファッション #廃棄禁止
シェア
シェア
シェア
リンクをコピー
この事例のポイント
  • 2026年7月19日からEUが大企業の売れ残り衣類・履物の廃棄を法的に禁止(EU Environment 2026年2月発表)
  • 未販売テキスタイルの4〜9%が廃棄され年間560万トンのCO₂を排出
  • 再販・寄付・リペア・リサイクル素材化が必須選択肢に
  • フランスは修繕指数と修繕補助金で先行。日本のアパレル企業も対応必須
Overview
EUは2026年7月19日から大企業に対し、売れ残り衣類・履物の廃棄処分を禁止する。ファッション業界に構造変革を迫る規制が始まる。
解説

2026年7月19日、ファッション業界の「廃棄ビジネス」が違法化

欧州委員会は2026年2月9日、Ecodesign for Sustainable Products Regulation(ESPR)の一環として、未使用衣類・ファッション小物・履物の意図的廃棄を禁止する新規則を発表しました(EU Environment 2026年2月発表)。施行は2026年7月19日から、まずは大企業(従業員250名以上)に適用されます。中規模企業(同50〜250名)は2030年から対象となる予定です。これまで業界の暗黙の慣行だった「売れ残り在庫の焼却・埋立処分」が、法的に違法化されます。

背景にあるのは年間560万トンのCO₂排出

EUの分析によると、未販売テキスタイルの4〜9%が一度も着用されないまま廃棄されており、これにより年間約560万トンのCO₂が排出されています。さらに2025年10月に発効したRevised Waste Framework Directiveは、加盟国に対して2025年末までに分別回収システムを整備するよう義務づけ、テキスタイル廃棄物に対する責任を製造者へシフトさせる「拡大生産者責任(EPR)」も組み込まれました。

ブランドの選択肢は「再販・寄付・修繕」へ

新規則のもとで、企業はもはや在庫を捨てるという選択肢を持ちません。代わりに、再販プラットフォームでの販売、慈善団体への寄付、リペア・リフォーム、リサイクル業者へのフィードストックとしての提供といった選択肢が必須になります。これは過去10年間に急速に立ち上がった2nd-handマーケット(ThredUp、Vinted、Depop)にとっては追い風です。一方、ブランド側は需要予測の精度向上と、生産・流通の柔軟化が経営課題として急浮上します。

フランスは「修繕指数」で先行、日本企業も対応急務

EU内では、フランスが2021年に「修繕可能性指数」を導入し、2024年から「持続可能性指数」へ拡張。2023年11月からは「衣類・靴の修繕補助金(7〜25ユーロ)」を国民に支給する独自施策を展開しています。日本のアパレル企業にとっても、欧州市場へ製品を出すかぎり影響は避けられません。倉庫の管理、サプライチェーンの設計、商品開発のサイクル、すべてを「廃棄前提」から「再循環前提」へ作り直す段階に入りました。サーキュラーエコノミーが、もはや理念ではなく法令遵守の問題になっています。

Business Hint
ビジネスヒント
捨てない流通へ──EUの新規則がファッション業界の構造を強制的に書き換える。

EU売れ残り廃棄禁止規則は、ファッションビジネスの基本動作を変えます。これまで「過剰在庫を即座に廃棄する」ことは、ブランド毀損を避けるための裏技でした。値崩れを避けるため、慈善寄付すら控えるブランドも存在しました。新規則はこの慣行を不可能にし、廃棄コストを「未来の利益から事前に差し引く」会計感覚を企業に強制します。

マーケティング視点で重要なのは、再販・修繕・回収のプロセスを顧客接点に組み込むチャンスでもあるという点です。ブランド純正のリペアサービス、買取・再販プログラム、サブスクリプション型レンタルなど、製品ライフサイクル全体を通じた顧客との関係を設計する企業は、競合優位を確立できます。Patagonia、Eileen Fisher、ZARA Pre-Ownedといった先行例が示しています。

日本企業にとっての示唆は、欧州輸出だけでなく国内事業にも波及する可能性が高いことです。「捨てるのが当たり前」から「再循環が当たり前」への転換は、ブランドメッセージ、店舗オペレーション、SKUプランニング、デザインの段階まで影響します。守りの規制対応として捉えるか、攻めのブランド資産として活用するかで、5年後の競争位置は大きく変わります。

MOVEMENTについて
MOVEMENT
トレンドをハックする

世界各国のトレンドを、マーケティング視点で解剖。現象の裏にある"なぜ"を読み解き、次のビジネスのヒントを届けるグローバルトレンドメディア。

フォロー
引用元
EU Environment
Share
シェア
シェア
シェア
リンクをコピー
Related Articles
2026.05.06
2026.03.29
2026.03.26
MOVEMENT