リコマース(Re-commerce=中古品の再販売ビジネス)は、なぜ「妥協」から「メイン選択肢」に変わったのか
かつて、中古品を購入することは「新品が買えない時の選択肢」という認識がありました。しかし今、特にZ世代の間で、この認識が根本的に変わっています。ThredUp(米国最大級のオンライン古着プラットフォーム)、Vestiaire Collective(フランス発の高級ブランド古着マーケットプレイス)、Back Market(フランス発の中古電化製品プラットフォーム)といった大手リコマースプラットフォームが急成長し、その背景には「環境にいい」「経済的」という二つの価値を中古品に見出す消費者が増えているという事実があります。
ThredUpが2025年に発表した「Resale Report」によると、欧米のZ世代の約60%が「品質が同じなら中古品を選ぶ」と回答しており、ミレニアル世代の約40%を大きく上回っています。この違いは、単なる「節約志向」ではなく、環境への配慮と消費観そのものの転換を示しているのです。新品か中古かという選別基準ではなく、「環境負荷が低く、経済的効率がいいか」という新しい判断軸が生まれたということです。
「環境配慮」が実感できる経済的メリットになる仕組み
リコマースが拡大した理由は、環境意識の高まりだけではなく、極めて現実的な経済メリットが見える化されているからです。消費者の視点から見ると、新品のハイブランド商品を定価で購入するのではなく、プラットフォームで70~80%の価格で中古品を購入できます。また売却時も、同じプラットフォームを通じて適正価格で現金化できるため、全体として経済効率が極めて高い仕組みになっています。
さらに重要なのは、プラットフォーム企業が「サステナビリティ」を単なる概念ではなく、見える化した指標として提示していることです。ThredUPでは購入のたびにCO2削減量がグラムで表示され、Back Marketでは「新品購入と比較して環境負荷がどれだけ軽減されたか」を数値化しています。つまり、「安い+環境にいい」というダブルの価値が、視覚的かつ定量的に強化されているのです。この仕組みにより、環境配慮が単なる倫理的判断ではなく、自分の経済的・環境的な「判断の正しさ」を実感させることができるようになったのです。
ファッション・アパレル業界が戦略転換を迫られている理由
アパレル業界にとって、リコマースの拡大は脅威と機会が同居する状況をもたらしています。従来の小売企業は新品販売によって利益を得てきましたが、中古品市場の拡大は必然的に新品の需要を減少させています。しかし同時に、高級ブランド企業(LVMH、Kering傘下各社など)は対抗戦略として自社リコマースプラットフォームを立ち上げ、購入→使用→売却→再販が自社内で完結するクローズドループシステム(自社内で購入→使用→売却→再販が完結する循環型の仕組み)を構築し始めました。
この転換が示唆するのは、「消費者が循環型の購買体験を求めている」という明確な市場信号に、業界全体が応答せざるを得なくなっているということです。かつては「ブランドの新商品をいかに売り続けるか」が戦略の中心でしたが、今は「顧客がそのブランドの商品を何度も選び直せるエコシステムをいかに構築するか」がブランドロイヤリティの維持に直結する時代になったのです。
市場規模の急拡大は「流行」ではなく「インフラ化」の証拠
GlobalData(グローバルデータ分析企業)の「Recommerce Market Forecast 2025」によると、リコマース市場は2020年時点で約5兆円規模でしたが、2026年には15兆円を超えると予測されており、年平均約20%の高成長率で拡大しています。この急拡大はアメリカやヨーロッパだけに限定されず、東アジア(特に日本、韓国)でも同様のトレンドが観測されています。日本のメルカリなどのフリマアプリの成長率も同じ軌道を描いており、リコマースがもはや「一時的な流行」ではなく「生活インフラ化」していることが明らかになっています。この市場規模の拡大と多地域での同時展開は、小売業界全体の構造が今後10年間で根本的に変わることを強く示唆しているのです。